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第壱話 キーンコーンカーンコーン×2 国立学校法人・東都大学の構内に午前の講義が終わった事を知らせるチャイムがなる。 「はい、それじゃあ来月までにレポートの方を提出してください。テーマは「冊封体制と列強帝国主義の比較」です。これを出さなきゃ単位はあげません、よって進級できません」 中年の教授が課題を説明して文学部史学科東洋史専攻の午前の講義は終わった。 「さてと、今日の講義はもう無いし、これからどうしようか」 「いよぅ、同志よ。今はお暇かい?」 帰り支度をしながら考え事をしていた優一は声をかけられた。 今時風にまとめ上げた髪型に雑誌から丸々取ってきたようなファッション、顔つきはジャニーズ事務所に今からでもオーディションにでも行けそうな・・・、いわゆる「イケメン」である。しかし、その人物の本性を知っている優一からしてみればこれでやっとプラスマイナスがゼロになる。 「何だ拓真、言っておくが美少女フィギュアは買わないからな」 優一はそのイケメン、御堂 拓真に否定的な返事をした。実は彼、いわゆるアキバ系だ。 「おいおい優一、オタクに「フィギュアを買うな」は死活問題だぞ。どうせ暇ならサークルに来ないか?姉貴や由佳里ちゃんも来るってよ」 「ふむぅ、それじゃあご一緒させてもらおうかな。それとレッドもいるのか?」 「ったぼーよ、かく言うお前もアカツキちゃんはいつも一緒だろう?」 「私とマスターはいつも一心同体です!」 「それを言うなら以心伝心だろ」 カバンの中から出てきたアカツキに優一は的確なツッコミを入れた。 「おーやっぱりいたか。こんにちはアカツキちゃん。それとどっちもハズレだぞ」 「ハーイアカツキ、ご機嫌いかがかしら」 拓真の上着の胸ポケットから彼の神姫、騎士型のモルドレッドが出てきた。 「拓真さん、レッドちゃんこんにちは。話は聞かせてもらいました。すると、無頼さんもメリッサちゃんもいるんですね」 「そう言うことだ。ささ、行こうぜ」 「はい」 ―十分後・サークル棟内部・神姫同好会部室― 東都大学は他の大学の類に漏れず武装神姫のサークルがある。優一と拓真が所属している「神姫同好会」もその一つだが、初戦は同好会で、活動費用は全員で負担している。 「姉貴ー、クロ連れてきたぞ」 「ご苦労だったな我が弟よ」 部室の一番奥のいすに座った女性が拓真からの報告を受ける。パッチリとした切れ長の二重まぶたにすっきりとした目鼻立ち、髪の毛は焦げ茶のロングヘアーで何も飾り付けはしていないが、よく手入れされている印象を受ける。早い話が「べっぴんさん」だ。彼女の名は御堂 春香(みどう はるか)、拓真の姉であり、この同好会の会長も務めている。 「こんちわっす春香さん。由佳里はまだみたいですね」 「ああ、ゼミで少し遅くなると連絡を受けた所だ。どうせヒマだし、一戦どうだ?無頼もかまわないだろう」 「拙者は主殿の命に従うまでのこと、拒否はせぬ」 傍らに座していた春香の神姫・侍型の無頼も乗り気のようだ。 「ここで引き下がるのは俺の筋に反しますし、良いでしょう。受けて立ちますよ。行くぞアカツキ」 「はい」 実を言うとアカツキは無頼とあまり戦ったことが無く、しかも少ない試合の中で全て負けている。それも無頼本来の戦法が使われたのは一度もない。 「今回ばかりは拙者も本気で征かせてもらうぞ、アカツキ殿もそれでよかろう」 「こちらこそ、全力で征くよ」 今回のバトルフィールドは「円形闘技場」、ローマにあるコロッセオをモチーフにした最もシンプルかつ最も腕が現れるステージである。 アカツキと無頼は既に初期配置に着いている。 今回アカツキはリアウィングを装備していない。その代わりにヴァッフェバニーのバックパックをスラスターとして背中に、アークの後輪を両足に取り付けてランドスピナーとしている。左腕にはシールドではなく、どこぞの戦闘装甲騎からぶんどってきたスタントンファーを装備しており、右手にはビームサブマシンガン持っている。それ以外はいつもと同じだ。 対する無頼は胴と胸、腰回りは紅緒のデフォルト装備だが、左肩に装備されたシールドにはデカデカと「無頼」の文字がペイントされている。手には黒光りする太刀が握られており、左腕には刀の操作に支障が無いよう速射砲を装備している。対抗するつもりかどうかは知らないが、アカツキと同様にランドスピナーを装備している。 「今回は制動刀か・・・、アカツキ、間合いをよく考えて行くんだ」 「わかりました。無頼さん、行きます!」 「先手は譲ろう。いつでも来い!」 天使と武者、紅白が今、ぶつかろうとしていた。 第弐話へ とっぷへ
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神姫 セリフ集 セットアップ コピー用 神姫ステータステンプレ 第1弾 天使型アーンヴァル 悪魔型ストラーフ 天使型アーンヴァルB 悪魔型ストラーフW 第2弾 犬型ハウリン 猫型マオチャオ 兎型ヴァッフェバニー 犬型ハウリン リペイント(wp) 猫型マオチャオ リペイント(wp) 第3弾 騎士型サイフォス 侍型紅緒 サンタ型ツガル 騎士型サイフォスB 侍型紅緒B 第4弾 花型ジルダリア 種型ジュビジー 砲台型フォートブラッグ 花型ジルダリアB 種型ジュビジーB 砲台型フォートブラッグ冬季迷彩仕様 第5弾 セイレーン型エウクランテ マーメイド型イーアネイラ イルカ型ヴァッフェドルフィン セイレーン型エウクランテB マーメイド型イーアネイラB 第6弾 寅型ティグリース 丑型ウィトゥルース 建機型グラップラップ 第7弾 HST型アーク HMT型イーダ 蝶型シュメッターリング HST型アークst HMT型イーダst 第8弾 戦車型ムルメルティア 戦闘機型飛鳥 火器型ゼルノグラード 戦車型ムルメルティア砂漠戦仕様 戦闘機型飛鳥夜戦仕様 火器型ゼルノグラード冬季迷彩仕様 第9弾 カブト型ランサメント クワガタ型エスパディア 第10弾 サソリ型グラフィオス コウモリ型ウェスペリオー 第11弾 戦乙女型アルトレーネ 戦乙女型アルトアイネス 第12弾 エレキギター型ベイビーラズ ヴァイオリン型紗羅檀 第13弾 ヘルハウンド型ガブリーヌ 九尾の狐型蓮華 ライトアーマー第1弾 天使コマンド型ウェルクストラ 悪魔夢魔型ヴァローナ 天使コマンド型ウェルクストラB 悪魔夢魔型ヴァローナW ライトアーマー第2弾 ナース型ブライトフェザー シスター型ハーモニーグレイス ライトアーマー第3弾 フェレット型パーティオ リス型ポモック ライトアーマー第3弾proto フェレット型パーティオproto リス型ポモックproto ライトアーマー第4弾 箸型こひる スプーン型メリエンダ Mk.2 天使型アーンヴァルMk.2 悪魔型ストラーフMk.2 忍者型 忍者型フブキ 忍者型ミズキ 以下未実装(フィギュア添付アクセスコードなし) 第11弾リペイント 戦乙女型アルトレーネ・ヴィオラ 戦乙女型アルトアイネス・ローザ 第14弾 鷲型ラプティアス 山猫型アーティル 第15弾 ケンタウロス型プロキシマ テンタクルス型マリーセレス 第16弾 剣士型オールベルン 剣士型ジールベルン 第16弾リペイント 剣士型オールベルン・ガーネット 剣士型ジールベルン・サファイア Mk.2リペイント 天使型アーンヴァルMk.2テンペスタ 悪魔型ストラーフMk.2ラヴィーナ
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晴れた昼下がり。 特にやることもないのでボーッとしてるわたし。 「何ポケッとしてるの?」 横からわたしの顔を覗き込む人がひとり。 上へはね気味の髪型にはつらつとした表情。 「悩んでることがあったらすぐに私に相談しなさいっ…ごほっ」 胸を叩いて…勢いよく叩きすぎてむせてるこの人は天乃宮未来(あまのみやみらい)、わたしの一年先輩なの。 「でも…先輩は微妙に専門外なの、神姫ファイトの話だから」 「バトロンの事? …スィーマァちゃんの事ね?」 「はい…」 あれから敗北を重ね、後一敗で40連敗。 いまのスィーマァなら勝てる相手でも決着がつかない。 「うーん。…やっぱり精神的な問題じゃないかな?」 「やっぱりその結論に達しますの…」 一度も勝ってない(引き分けはある)となれば、自分のアイデンディティに疑問を持つのは当然。 しかも自分を負かす相手は必ずゲイトだ、自信が持てなくなるのはわかる。 「最低でも年度が変わる前に何とかしないと、下手したら思いつめて…」 その言葉を受けて怖い映像が頭をよぎる。 「ひゃーっ!? まずいよマズイのぉっ」 「慌てない。大事なのは「なにが得意かを気付かせる」って事かしらね」 スィーマァの得意なのこと? …うーん、ケーキの切り分け? 「駄目だこいつ…早く何とかしないと…」 「ひどいですよ先輩~!」 拳と拳がぶつかる。 …拳というより、鉄拳と言った方が適切か(材質的な意味で) 「右から踏み込まれた時の反応が遅い! 相手が拳を握った瞬間に手を出す!」 「ぐぅぅ…!」 アームとアームのぶつかり合い。 本来、機械腕による格闘戦を得意とするムルメルティア。だがスィーマァは正直、アーム戦が苦手であった。 「くぁっ!」 左アームでナァダの攻撃を受け流す…が 「右がガラあきになってるぞ」 ズシッ 「ぐぉふぅ……!?」 本体へ直接攻撃を受け、吹き飛ぶスィーマァ。 「すまん、強く叩き過ぎた」 反応はない、痙攣を起こしている。 「まずいな」 …… 「………う」 「気がついたか?」 右わき腹への鈍痛と共にスィーマァは目を覚ました。 「自動修復機能の許容範囲で良かった。もし限界を超えていたら腹を開かにゃならんしな」 「ぴっ!?」 自分の腹が開かれるのを思い浮かべ縮こまる。 「ふ…ふふ…」 「どうした?」 顔を伏せたまま笑うスィーマァ。 「…私って、ホントに駄目ですね……ふふ」 「おいおい…」 「生まれて一度も勝ったことのない、得意なはずの分野も苦手、オマケに戦意までうしなうなんて…」 ぽろり、ぽろりと零れ落ちる涙。 「私なんて…武装神姫失格ですね…」 ぽんっ そっと頭に置かれる手。 「みぇっ?」 ぱたん そしてそのままナァダの膝枕へ。 「…確かに、戦いの本質は勝つことにある。しかし勝つという気持ちが負けていれば勝てる戦いも勝てない、お前の状況はまさにそれだ」 「……」 「自分に自信が持てない者が勝てるはずが無い、…そのはずだ」 ふわりとした髪を撫でる。 「アーム戦がどうしても駄目なら、その発想を捨ててしまえばいい。ようは逆転の発想だな」 「……」 「…スィーマァ、どうした?」 「…すぅ…」 「何だ、寝てしまったのか。…まあ、話を聞いていたのならどうにかなるだろう」 ~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~ 夜、具体的には午後11時05分。 かたっ 「すぴーっ…」 ひゅっ…がたん! 「むぅ……どうも寝苦しい…」 多分夕飯のコロッケが胃をムカムカさせてるんだと思う。 微妙な吐き気を催しつつ起き上がる…と、ここで机に目がいった。 ひゅっ ひゅっ 小さな影が素振りをしていた。 「スィーマァ」 「あ…!? すみません、起こしてしまいましたか?」 「んー、胸やけで起きただけだから違うの」 …そうだ、この際だから聞いてみよう。 「スィーマァ、あなた…ゲイトに勝てる自信ある…?」 それを聞き、少し黙った後。 「自身はないですけど、勝てる見込みは掴みましたよ」 あら、いつの間に? 「だから、ちょっと用意してもらいたい物がいくつか…」 「これで負けたら40連敗だな、古代」 「いちいち言われなくてもわかっているの!! そのテングっ鼻をへし折ってやるから!!」 嫌味で言ってるにちがいない、こいつは昔っからそうだったもん。 「さあ、さっさと始めようぜ」 …… リフトから対戦筺体へと進入してゆく神姫達。 そのデータと姿が液晶に映し出される。 ゲイトはスタンダートなチーグル+サバーカ装備。 対するスィーマァが携えるものは、拳銃ただ一丁のみであった。 「古代、遂にヤケでも起こしたのか?」 「そんな訳ないじゃないの、わたしはいつでも真剣に組んでるもの」 あまりにも自信が溢れているすすみを見 「…何を企んでいる?」 そう呟いた吹雪であった。 [battle start スィーマァVSゲイト] 特攻神姫隊Yチーム?に戻る トップページ
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第13話 「姫君」 『……子供(じゃねぇか)(ですね)』 確かに芸能界ですら滅多に見られない程の美形だが……あの背丈はどう見たって小学生以上だとは思えない。 あれを形容するなら『美女』ではなく『美少女』だ。 仕方ないのですっかり興奮しきった様子の白黒ミリオタチンパンジーに問い質すことにする。 「……まさかとは思うが、アレがお前の言ってた『武装神姫の流れ星』か?」 「ン何をいっとるかキサマぁ! ああいう人物を称える格言があることを知らんのか!?」 「格言?」 「ふふん、知らずば言って聞かせよう……古人曰く! 『ぅゎ ょぅι゛ょ っょぃ』 とな!」 「要するにお前はアレか、わざわざそんなクソッタレな寝言を聞かせるために俺を引っ張り出したと。 そう言いたいのか?」 ……こんな茶番と分かっていれば、昨夜あんなに悩みはしなかったものを。 「撃ちましょうか?」 「許す」 どぎゅーんちゅどーんうぎゃーと先日と同じ展開の中、不意に楽しげな声が割り込んだ。 「ふふっ。 そなたのまわりはあいかわらずドタバタとやかましいようじゃの、おおさわ」 舌っ足らずで高い声の持ち主は、言うまでもなく件の少女。 身に纏った純白のドレスは、服飾品の素材に疎い俺にも分かる高級品だ。 まるでそれ自体が光の加減で発光しているかのようで、どう見てもこんな場所に似つかわしいとは思えない。 しかし少女はそんな自分自身の異質さを気にした様子もなく、、自信に満ちた表情でこちらをじっと見据えていた。 ……が、俺が何も言わずにいるのを訝しんだか、形の良い眉が動いた。 「む? 今日わたしのあいてをしてくれるというのは、そなたたちではないのか?」 「えぇ、そうです。 ……多分」 なおも無言な俺の代わりにルーシーが答えると、八の字を描いていた眉はすぐに元に戻った。 「なんじゃ、人ちがいをしたかと思ったではないか。 おどろかすでない」 安堵したような愛らしい笑顔を見ながら、俺は『なんでこの子供はこんな喋り方なんだろうか』と考えていた。 「ムっはーぁッ! エリザベス姫、お久しうぅぅ!」 「せんしゅうも会っておいて『ひさしい』もなかろ」 グレネードツッコミのダメージもなんのその、頭から煙を噴きながら飛び起きて召使のように跪く大佐和と、その頭を手に持った扇子でぺしっとはたく少女。 「不詳この大佐和軍治、姫をエスコートするべく待機しておりましたが、出迎えに参ずる事叶わず大変失礼を!」 「よい、もとよりそなたにエスコートなどできるとは思っておらぬ。 気にやむな……というかよけいな気をまわすな」 ……なんなんだ、この本人たちだけが楽しそうなお姫様ごっこは。 俺とルーシーが顔を見合わせていると、ようやく俺たちの存在を思い出したらしい大佐和が立ち上がって紹介を始めた。 「さアぁ姫っ! こちらが先日お約束した対戦相手でゴざいますッ!」 「うむ、ごくろうじゃったの。 あらためて、わたしはエリザベス・寺舞(てらまい)。 今年で9さいになる。 今日はよろしくたのむ」 にこやかに笑う少女が手を差し出すのに、俺とルーシーも応じる。 「あー…あぁ、うん。 俺は藤丘遼平」 「遼平さんの神姫、ルーシーと申します」 俺、ルーシーの順で握手。 「おおさわの知り合いじゃというからいったいどんな『へんじん』かと思っておったが……」 うわぁすっげぇ不本意。 「ちょっと待ってくれお嬢ちゃん。 ひとつ言わせてもらうがな」 「わかっておる、なかなかの『しんし』とみた。 …すくなくとも」 すいっ、っと扇子で口元を隠し、半歩こちらへ歩み寄る。 「……アレよりはじょうしきがある」 隠した口元には、くすくすといたずらっぽい笑いが刻まれている。 間近で見ると……なるほど、これならギャラリーが増えるのも分かるっつーか。 「遼平さん、何考えてるんですか?」 「いーえぇ何にも」 なんだか不満げなルーシーの頭を撫でてやってると、ふと少女……エリザベスの表情が真顔になった。 「そなた、そっちの足は『ぎそく』じゃの。 長いのか?」 俺の目をまっすぐ見据え、はっきりと言ってきやがった。 「去年な」 「そうか」 短いやりとりで、俺とエリザベスは互いに黙した。 この態度、潔いと取るべきか遠慮がないと取るべきか。 だが子供ゆえの無邪気さからくる、興味本位の不躾な質問でなかったのは分かる。 9歳だと言ったが……なかなかどうして。 前話「相手」へ 『不良品』トップページへ 次話「制限」へ
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1st RONDO 『どいつもこいつも神姫マスター』 『ホイホイさん』 という人形をご存知だろうか。 そのネーミングからなんとなく想像がつくように、この人形は殺虫剤をものともせず室内を走り回る “黒い閃光(通称G)” を駆除するためにマーズ製薬㈱によって生み出された――とはとても思えない、3.5頭身の可愛らしい殺虫人形だ。 俺がまだ高校生2年生だった頃に市場に出回ってからというもの、授業中に持ち主の鞄から抜け出し校舎内を徘徊するホイホイさんが後を絶たなかった。 思い思いの装備に身を包んだホイホイさんは片っ端から害虫をデストロイし、そこら中に死骸の山を築き、挙句の果てに生物部で飼育していた小動物にすら手を掛けてしまったのだが、そこはまあ、どうでもいい。 マーズ製薬曰く 「ホイホイさんは(ゴキブリに殺虫剤が効かなくなったから)冗談のつもりだったのに生産が追いつかない」 と続々とホイホイさんアナザーバージョンを生み出し、他の製薬会社もホイホイさん同様の機種を続々と発表していた頃、大手玩具メーカーのコナミ㈱から、 『武装神姫』 という人形が発売された。 こちらもホイホイさんのように武装させる人形なのだが、大きく違う点として、 ・種類にもよるが、頭身は5~6。ヒトガタに近い。 ・武装は神姫同士の勝負を楽しむためにある。 Gを駆除するためではない。 ・人間と遜色ない会話・行動が可能。腕などの関節部を見なければほとんど小人。 が挙げられる。 スペックの高さから分かるように値は張るものの、この “心を持った人形” で勝負を楽しむだけではなく、生活のパートナーとして扱う者も多い。 さて、男ならば当然の発想として(?)、ホイホイさんと神姫を戦わせてみたくなる。 異種格闘戦にときめかない男など男ではない。 たぶん。 そしてそのトキメキは弓道部内で唯一の神姫マスターであった部長と、その他複数人のホイホイさん達によって実現することとなった。 後に “Mの悲劇” と呼ばれる事件である。 あまりにも酷たらしく、そして惨たらしく殺壊された猫型神姫マオチャオは観戦していた部員達に強烈なトラウマを植えつけた。 その話はまたいつの機会に取っておくとして。 それから大学に進学した今日に至るまで俺は、神姫を購入したくても手を出せないでいる。 ▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽ 夢のキャンパスライフ。 そんなものは所詮夢であったと思い知らされた大学一年目が終わり、しかし春の風と共に乗ってきた幸福感をたっぷりと噛み締め、二年目は軽快に滑り出した。 何せ人生初となる彼女ができたのだ。 春とはいえ過剰に浮かれポンチになっていたとしても、多少は目を瞑ってもらいたい。 それができないならば、俺が無理矢理にでも目を逸らさせてくれよう。 姫乃を有象無象の濁りきった目に晒したくないのだ。 独占欲とはこういうことかと、今更ながらに知った背比弧域である。 しかし現実的に姫乃を独占するのは難しく、今はお互い離れた席に座り、姫乃は彼女の友人達とひそひそおしゃべりを楽しみ、俺の隣には 「すぴー……こーほー……」 講義の最中であろうとお構いなしにふんぞり返って爆睡する貞方がいる。 だらしなく開かれた口に水で濡らしたティッシュを詰め込みたくなる。 人が真面目にノートを取っているというのに、こいつは講義が始まる前から寝息を立てていて、しかもそれでいてこいつは “ノートをしっかりと取っているのだ”。 貞方の机の上で教授の板書が綺麗に現在進行形でまとめられている。 ノートの上で自分の背丈と変わらないシャープペンを一生懸命動かすのは貞方の神姫の、 ええと―― 「ハナコです。 よろしくお願いします、背比さん」 俺の視線に気づいた神姫に突然話しかけられ、うっかりシャープペンを落としてしまった。 まさかいきなり自己紹介されるとは思わなかったから驚いた、わけではない。 というかハナコとはほぼ毎日顔をあわせている。 幼い頃テレビで 「一度会ったら友達で、毎日会ったら兄弟だ」 と着ぐるみ4匹に教わったのを思い出した(昔の教育番組の再放送だった気がする)。 ということは、俺とハナコは兄妹ってわけだ。 ……必然的に貞方とも兄弟になってしまった。 このハナコと名乗る勘のいい神姫は犬型のハウリンと呼ばれるタイプだ。 ケモテック社ならではのコミカルで愛くるしい見た目が特徴的で、 ――マオチャオと同時に発売されただけあって、そのシルエットはトラウマを呼び覚ます。 「……神姫って読心機能ついてんの?」 「あ、いえ。 私の名前を忘れたなー、という顔をされていたので」 そう言ってペコリと頭を下げ、再び作業に戻った。 今は身体を服っぽくペイントされているだけだが、貞方がこの神姫を買ったときに一度 「どうよ俺のハナコ、イカすだろ!」 と武器を持たせた状態で見せられたことがあった。 その時は頭に犬に似せた被り物をさせて、手足もアニメ調の犬らしくなっていた。 なるほど、犬型ね。 ダメ飼い主に文句も言わずノートを取る姿を眺めていると、なんだか俺が心苦しくなってくる。 シャープペンを両手と脇で器用に支えて字を書き、芯が短くなればシャープペンを逆さに持って机に杭を立てるようにノック。 字は綺麗でもさすがに書く速さはどうしようもないらしく、教授の板書について行くためにさっきから一息つくこともなく手を……じゃなく、身体を動かしている。 俺のノートを後でコピーさせてあげたくなるが、結局それが貞方の手に渡ることになるのが気に食わないので、ハナコには申し訳ないのだが、ダメ飼い主を引き当ててしまった運命を全うしてもらうより他はない。 いや待て、何故俺がハナコに気を使わねばならんのだ。 それにしてもハナコの字、綺麗だなあ。 ロボットだからなのか、書道の手本のような明朝体だ。 ……人形よりも字が汚いんだな、俺って。 「あ! ……すみません、背比さん」 「うん?」 「その、大変申し訳ないのですが、シャープペンの芯を一本頂けませんか。 後でちゃんとお返ししますから」 「いや、芯くらいいくらでもやるよ。 ダメ飼い主を持って大変だろ」 「いえ、とんでもな――あ、ありがとうございます――ショウくんのためになれて嬉しいですから」 そう言って、ハナコは微塵の邪気も混ぜずにはにかんだ。 健気だ。 健気すぎる。 その笑顔が眩しすぎて、 「いや、代わりにノートをとるのは貞方のためにならないぞ」 とは口が裂けても言い出せなかった。 というか貞方、自分のことを 「ショウくん」 って呼ばせてるのか。 いつもは 「マスター」 だったと思ったが――ああ、そういうことか。 「なあ。 普段は貞方のことを何て呼んでるんだ」 「普段からショウくんですよ。 でも外では恥ずかしいからマスターと呼べと言わ…………」 「ほう。 普段はショウくん、ね」 「~~~~っ!!」 シャープペンを放り投げてその場に丸くなってしまった。 頭隠して身体隠さず。 抱えた頭を少しだけ上げてこちらを上目遣いで見るハナコ。 どうする、アイフル(何年前のCMだ)。 ただのレンズであるはずの瞳が潤んでいるように見えて、少しだけ、この神姫を可愛いと思ってしまった。 「あ、あの、このことはショ……マスターには、」 「分かってるって。 言わないから安心してくれ」 俺だって知りたくなかったよ。 こいつが人形に 「ショウくん」 と呼ばせてるだなんて。 ホッと胸をなで下ろす仕草も可愛らしく、 「では、くれぐれもよろしくお願いします」 とペコリと頭を下げ、再びシャープペンを抱えた。 まあ、正直に言うと、神姫に自分のことを愛称で呼ばせたくなるのは分からないでもない。 未だ “Mの悲劇” を引きずっているとはいえ、貞方とハナコのように良い付き合い方 (この場合は仲が良いことを指すのであって、神姫にノートを取らせるのはマスターとして、いや人として駄目だ) を見ていると、人間と人形のそんな関係もアリなんだろうな、と思えてくる。 いや、もちろん俺には一ノ傘姫乃という無敵に素敵な彼女がいるわけだが。 ボロアパートの一室、俺の部屋の中に身長15cmの小人が住んでいるのを想像すると、ついつい口が緩んでしまう。 ふと気がつくと、ハナコといつの間にか目を覚ました貞方が二人そろって怪訝そうに俺を見ていた。 「何ニヤついてんの、きめぇ」 さっきまでのコイツのアホ面、写真に撮っとけばよかった。 「そういえば背比、神姫買わないの?」 何が悲しくて、彼女ではなくアホ面野郎と昼飯を食わねばならんのか。 男が全生徒の九割以上を占める工業大学では姫乃曰く 「人数少なくても理系でも、女の子は女の子なの。 良くも悪くも」 だそうで、付き合い始めてからまだ一度も二人で昼飯を食べたことがない。 事情は理解しないでもないが、それでも目の前にいるのが貞方というのが、率直に嫌だ。 「あん? なにが?」 「神姫。 一ノ傘さんも持ってるじゃん」 「は!? なにそれ、俺知らねぇんだけど! なんでお前が知ってんの?」 貞方が思いっきり仰け反って顔を引きつらせた。 何やってんだこいつ。 ……と思ったら、いつの間にか俺が貞方を責めるように身を乗り出していた。 「そりゃだって、見たし。 講義ん時に鞄の中にロバ耳の王様みたくしゃべってて、何やってんだと思ったら神姫が顔だけ出してた。 あのツインテールは確かストラーフ型だったと思う」 コイツが知っていて俺が知らないことがあるのも腹立たしいし、それをコイツから聞いたというのも腹立たしい。 今まで姫乃に、神姫に興味がある素振りはなかったように思うが、何せ神姫といえばハイスペックパソコン並に高価な人形だ。 リカちゃん人形のようにそうホイホイと買えるものではない。 (リカちゃん人形にはホイホイさん並の人工知能しか搭載されていない。 子供に悪影響を与える可能性があるのと、人形メーカーとしての誇りがあるとかないとか。) 俺が神姫の話を振っても 「んー、そうねえ」 と生返事を返すだけだった。 それがどうして? いつ、どこで、なぜ姫乃は神姫を購入するに至った? そして何故それを俺に黙っている? ……姫乃が何を買おうと彼女の勝手なのは分かっているつもりでも、どうも、こう、考えが悪い方に悪い方に向かってしまう。 みみっちい男と笑われるかもしれないが(姫乃に限ってそんなことは有り得ないが)、彼女のことはどんなことだろうと把握しておきたいし。 …………まぁ、何だ。 俺と姫乃ではない第三者が表れ、ソイツの影響で神姫に興味を持ったんじゃないかと邪推しているわけだ、俺は。 情けない男だろ。 ちっちゃい男だろ。 「ほら笑えよ。 笑いたいんだろ、無理矢理笑わすぞコラ」 「意味ワカンネーヨ。 っつーか、仮にその第三者がいたとしても、そいつが男とは限らんだろが」 「だから男だったらどうすんだっつってんだろ! お前責任取れんのかこの糞野郎!」 「はぁ!? カツカレーの食い過ぎで頭イカレたかお前。 ってか一ノ傘さんが浮気とかするわけないだろが。 アホか」 「お前に姫乃の何が分かる!! 適当なこと言ってんじゃねええええええ!!」 「テメエも知らなかったじゃねえか! ウダウダ言ってねぇで本人に聞けやあ!!」 「ハナコにショウくんとか呼ばせてんじゃねぇええぇぇぇぇぇぇえええ!!!!」 「おまっ!? 何故それ……はなこぉぉおおおあああああああ!!!!」 食堂で騒ぐ馬鹿が二人。 不毛な罵り合いは、貞方の鞄から出てテーブルによじ登ってきたハナコが仲介に入るまで続いた―――― NEXT RONDO 『そうだ、神姫を買いに行こう ~1/4』 15cm程度の死闘トップへ
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津軽弁を排除したサビ抜きバージョンです(サユリの1人称のみ「わー」のままです) 昔々・・・ではなく2036年の事でした。あるカラオケ屋にとても変な神姫が居りましたとさ。どれだけ変なのか~って言うとこんな感じでした。 〔割と久しぶりだわ、カラオケなんて。そう言えば新曲で歌いたいのがあったのよね。とりあえず副部長、お酒頼んで〕 {部長部長!! 一応サークルの新人歓迎会だって忘れないで下さいよ! あ、キミたち、食べたいものがあったら好きなの頼んでいいですから} 「・・・私、人前で歌うのはあんまり・・・」 [新入りちゃん、大丈夫だって。聞いてるだけでも、今宴会用のパーティーグッズだか何だかも頼んだからちゃんと楽しめるって!] 〈ちょっとセンパイ・・・そういうパーティーグッズって大抵イタいコスチュームとかしょうもない玩具とか、最初は勢いで楽しんでも2度と使えなくて、しかもこういう所で頼むとぼったくりな料金取られますよ!?〉 [そっちの新入りはツッコミきついな~。いいじゃねえかよ、意外と面白いのが出てくるかもしれないだろ?] 『そうよっ!! 面白ないかは見てから決めてなさいっ!!!』 {いきなりマイク最大で喋るのは誰ですか! あ、人形?} 〔武装神姫じゃないそれ? 着物着てるけど、確かツガルタイプね〕 〈武装神姫って・・たしかマニアックな玩具でしたっけそれ? 良く種類まで知ってますね〉 『オモチャとは違うわ!! わーはさすらいの神姫演歌歌手、サユリちゃんよ!! まずは1曲聴いてくださいっ!! “津軽海峡冬景色”! ~♪ ~゛♪゛♪~』 [なっ!? 演歌ぁ!? いまどき演歌なんてジジイでも歌わねえのに、そんなんで盛り上げようなんておこがましいぜ!! 俺の“B’zの新曲”でも聴いて考えを改めな!! ~゛♪゛♪~!!] 『へー、言だけあってとても気合入った声してるわね。けれど歴史の浅い歌では重さが足りませんよ!! 真の歌っていうものは今の時代に聞いても凄く涙出るものなのよ。それとも古い歌なんて今の若い人は知らないの? 格好悪いわね! “淡墨桜”!! ~~♪♪!』 [B‘zの歌が軽いだと!? 古い歌知らねえだと!? そんな減らず口、この歌で塞いでやる!! “ギリギリchop”!! ~゛♪゛!!♪♪♪!!!~] 「・・・“Top of the World”歌います。~~♪~♪~♪~」 〈ああもう・・・、歌えばいいんでしょうが!! “Imagine”!! ~~~♪~♪♪~〉 〔へえ、意外といい歌知ってるじゃない2人とも。これは演歌ちゃんだけじゃなく、新入りちゃん達にも負けていられないわね! “みかんのうた”行くわよ! ゛♪゛♪゛♪~ ゛!゛!゛!~〕 {ああもう部長まで挑発に乗って、これでは収集が・・・} 『黙りなさい!! オケ屋なんて暴れて歌うトコでしょう!! ぐだぐだ言ってないで歌いなさい! “鳳仙花”! ~゛!! ♪♪~゛♪~』 {歌わないとは言っていません!! “脳内モルヒネ”、歌います・・。 ♪~! ♪♪~♪~} 〈次は“ピンクスパイダー” !!!♪♪~♪!!〉 「・・・“fly me to the moon” ♪~♪♪~♪ ♪♪~」 〔皆、古い歌しばりでもレパートリーあるのね。“石川大阪友好条約” ~♪ ~!! ~♪♪〕 [“DA・KA・RA・SO・NO・TE・O・HA・NA・SHI・TE”だ!! ♪~♪♪ !!!~♪] {“月に叢雲花に風”、歌います。 ~!!!~♪~!!!~♪♪} 『“夕焼けとんび”です!! ~~~~♪♪~~!!♪~』 [次は“LADY NAVIGATION”を・・・] 〈センパイ、俺の“lithium”が先です!! 大体、70過ぎても現役ロッカーな物好きの歌ばっかり歌わないで下さいよ!!〉 [B’zをバカにするな! 大体お前だって自殺とか殺されたりした奴の歌ばっかり歌ってんな! 辛気臭い!!] 〈なっ!? 別に歌は辛気臭くないんだからいいじゃないですか!!〉 『どうしたの、歌の趣味なんて人の好きじゃない?』 〔ねーねー、折角だから皆で“青のり”歌わない?〕 [{〈『それは却下!!!!』〉}] こんな風に、それはそれは迷惑な位古い演歌に情熱を注ぐ変わり者さんなのでした。 「ありがとうね~♪」 「有難うございました~♪ ・・・あ~ふわぁ~、眠ぃ、朝になってやっと閉店、これだからオケ屋のバイトってのは・・・」 サユリと歌ってた最後の客を見送ってから、マツケンが大きなあくびをすると、それを聞きつけて、奥からみりーも顔を出しました。2人ともサユリの同僚のアルバイトでした。 「マツケン君、最後のお客、随分盛り上がってたみたいだね」 「あ、みりー。それはこいつが居たからだよ」 「ああ、サユリちゃんか~。どうりで古い曲ばっかり聞こえてくると思ったら」 「久しぶりに、なかなか骨のある客だったわよ」 「珍しく、怒らない客だった、だろ? 毎度お前が古い歌で引っ掻き回した客の応対誰がしてると思ってるんだよ!!」 「でも結構サユリちゃんの売り上げ多いよ?」 「・・・珍しがってるだけなんだよ」 マツケンが睨んでも、サユリはなんとないわと鼻で笑っってました。 「さて、大分バイト代も溜まったから、わーはまた旅に出ようっと」 「へ? 旅って、もう出て行くのか?」 片づけを始めたマツケン達を尻目に、いきなりサユリは宣言しました。いつの間にかその体には大きな風呂敷も背負って旅支度まで済ませていたのです。 「え? サユリちゃんてこの店の神姫じゃなかったの?」 「ああ、こいつは俺たちと同じバイト」 「マスターも無しに?」 「なんでか知らねえけど、そうらしい」 みりーは先週からだったから、サユリの来た1月前のことは知らないのでした。 「ふらりとやってきて、いきなり1人で『住み込みで働かせてくれ~』とか言って押しかけて来たんだよこいつ。最近じゃ路上ライブも取り締まり厳しいからとか何とかで。で、物好きな店長が宴会要員として採用しちゃったんだよ」 「物好きなんて言うんじゃない!! わーの心意気に惚れ込んだから店長は雇ってくれたのよ!!」 「いや心意気はともかく野良神姫の飛び入りバイトなんて雇ったら十分物好きだろ大体お前演歌しか歌わねえし・・・まぁ、上手いとは思わなくもな・・」 「ねえ、ところで旅って何処へ行くの? 何が目的?」 「わーの師匠の親戚を渡り歩いているのよ」 マツケンの声を遮ってみりーが聞くと、サユリはそう答えていました。師匠って言うのはサユリのマスターの事だそうです。 「なんだ、野良じゃなくてはぐれた神姫だったのか。その師匠・・マスターを探して歩いてるのか? 何ではぐれたか知らないけど」 「だったらマツケンのお兄さんに探してもらったら? 確か元刑事だとか探偵だとか何とかじゃなかったかな」 みりーの言う通り、マツケンの兄は私立探偵をしていました。まーその欠けたハサミみたいな探偵の神姫に引っ掻き回され人生っぷりは別の話で見て下さい。しかし、みりーの提案にも、サユリは首を横に振ったのでした。 「違うわ。わーは別に師匠とはぐれた訳じゃないの。自分で旅に出て、修行してるのさ」 「修行!? 演歌の!?」 「わーは昔、さんざん「時期ネタ」だって虐められたのよ。サンタなんて「残りの364日はプー」なんて色々言われてねえ」 「あ~、俺も言ってたな。ツガルタイプはデザイン優先で使えないとかクリスマス以外の日にサンタが居てもありがたみが無いとか一人だけ元ネタありでデザイナーからゴリ押しで入れられた邪道だの色々。本人に言われると罪悪感沸くなあ」 「なら罪の償いに死んでくれない?」 「さらっと言うな酷いコト!!」 「それは冗談だけれど、実際それでわーはとても落ち込んでね。それを見てわーの師匠はこう言ったのよ。『一日だけでも、毎年喜ばれるならいい』てね。わーの師匠はたった1日の出番の日に、悪者になって豆弾を投げつけられるんだそうよ。それだけでなくてね、師匠の親戚は葉っぱで目潰しをされたり、初嫁や子供に挨拶しに行っただけなのに脅迫や誘拐に勘違いされたり、ただ笑っただけなのに「何をあざ笑ってるんだ!!」って非難されるって言ってたわ」 「でも実際悪さしてたんだろ? それだけ憎まれてるんなら」 「それはごくごく一部だけよ。殆どは昔良かれと思って始めた事なのに、皆が昔の事忘れてしまって全部悪い方に勘違いされてるのよ。それだけならまだ良かったんだけど、その風習自体ももう忘れられてしまってきていて、覚えも貰ってもいられなくなっているの」 「そんな・・・師匠さんの一族って可哀そう」 「ああ・・・ うん・・?」 みりーもマツケンも不幸なサユリの師匠を哀れんだのえした。けれどもマツケンはその師匠のことで、何か引っかかるとも思っていたのでした。 「けれども師匠はこうも言ってたわ。『だけど、俺達一族のやっている事は、関係ない、意味無いと言われても最後には人の幸せに繋がる事だから誇りを持っている』ってね。わーはその言葉にとても心打たれたわ」 「あ、なるほど。“風が吹けば桶屋が儲かる”の理屈か」 「え? 天気悪いと客足引くじゃない?」 「いやオケじゃなくて桶。風呂桶の桶だって。嫌な事が関係ないように見えて良い事に繋がってるってことわざ」 「そうよ、だからね、わーはそんな風に迷惑って言われても自分のやる事誇れる者になりたくて諸国巡りしている訳なの」 「そうか、だからわざわざ今では廃れて無意味で陳列棚の邪魔者って言われる演歌で身の上を立てたりしてるのか。神姫の癖に見上げた根性だよ、ホントに」 「いや、演歌は趣味だけど」 「話の腰折るなよ」 「それじゃ、そろそろわーは行くわね」 そう言ってサユリは風呂敷を背負って立ち上がりました。 「ホントに、言っちゃうんだね。それじゃあ、次は何処に行くの?」 「次は師匠の故郷に寄るのよ。京都の大江山なの」 「え? 大江山?」 「そう。師匠はそこに居ないけれど、集落には仲間が沢山居るって話よ」 「そっか、早く師匠さんに自慢できるようなオケ屋になれるといいね」 「ええ、頑張るわ。それじゃ、短かい間だったけれどがありがとうね。さようなら」 「うん、元気でね~!!」 朝日が、その小さな後姿をかき消したのは、ほんの一瞬のことでした。 「・・・ねえ、マツケン君、何か考え込んでるみたいだけど、どうしたの? サユリちゃんが心配?」 「いやさ、豆投げるのって、節分だよな? 最近あんまりやらないけど」 「・・・え?」 「節分の魔よけのヒイラギは目潰し用だって言うし、子供を追い回すって言うとなまはげ。来年の事を言うとアレが笑うってことわざもある。極めつけは京都の大江山って酒呑童子伝説の場所なんだよ」 「え、それって、もしかして、時期ネタで苦しめられて昨今忘れ去られてるってまさか・・・」 「いやでも・・・実在するなんて・・・ちょっとなあ、にわかに信じがたいってか・・・」 「・・・今度サユリちゃんに会ったら聞いてみるしかないよね」 「・・・また会ったら、な」 その後も、マツケンとみりーは神姫演歌歌手の噂は何度か聞く機会がありました。けれども、サユリとまた会うことは2度と無かったのでした。めでたしめでたし(?)。 目次へ
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MMS戦記 登場MMS MMS戦記に登場する主な神姫を紹介します。 戦闘爆撃機型MMS「シェライ・ドラッケン」 :カタリナ社・第1開発局製 :主兵装備 アサルトライフル×1丁 2mm機関砲×2門 マイクロミサイルポッド×2個 ビーム・ブラスターキャノン×4門 中型ミサイル×4基 迎撃ミサイルポッド×2個 チャフフレア×4基 小型同軸機銃×1門 脚部隠しライフル砲×2門 サバイバルナイフ×1本他 空中戦闘だけではなく対地攻撃能力にも優れた重装甲重武装の航空MMSである。 生残率を高める堅牢な装甲板、自動消火装置などの装備に加え、見た目に反し良好な運動性能があり、格闘戦を得意とする軽戦闘機を撃破するには最適の機体で、折畳み式の脚部を備え可変能力を有していたこともあって、初期のバトルロンドでは主力戦闘爆撃機型MMSとして活躍し、無難で堅実な設計が期せずして合理的な性能を発揮する。遠中近距離に全ての距離に対応可能であり、ミッションに応じて武装を換装するだけで高い汎用性能を持っている。これは武装全体がブロック構造を取り入れてリアパーツのコアに接続するだけで多種多様な武装を搭載できるように設計されているためである。 弱点はこのクラスの戦闘機型MMSとしては低速だった事であるが、それでも重武装の悪魔型や戦車型よりは優速であり、必要にして十分であった。限られた出力のエンジンで最大限の性能を発揮するため極力まで軽量化されたアーンヴァルに対し、大出力のエンジンを得て余裕のある設計がなされたドラッケンは全く正反対の性格の戦闘機であり、フロントライン社とカタリナ社の戦闘機型MMS設計に対する思想の差を象徴しているとも言える。 旧式のMMSで2030年代の初期の登場から10年以上経過しているが、余裕のある機体設計と高い防御力と汎用性で2040年代でも現役でアップデートや改良が加えられて相当な数が運用されている。 「ドラッケン」名前の由来はドラゴンの訛った言い方が元である。 天使型MMS「アーンヴァルMKⅡ/テンペスタ」 :フロント・ライン社製 :主兵装備 レーザーライフル×1 アルヴォ機関銃×2挺 M8ライトセイバー×2 アルヴォPDW11ブレイド×1 LS9レーザーソード×1 ココレット×4発 FLO-16アーンヴァルmk.2はフロントライン社のベストセラー機種アーンヴァル系列の最新モデルである。2040年代を代表する航空MMS。 初期モデルのアーンヴァルは、改修、追加パーツによるアップデートが限界を迎えていたため、素体を新規格で新造し武装の機能を統合パッケージ化したもの。これまで戦闘スタイルによって選択していた単能武装を個々のパーツに複数の機能を持たせることにより、一体の神姫が無理なく扱えるサイズにまで小型化している。本機―FLO-16/T アーンヴァルmk.2テンペスタは武装搭載量を重視した攻撃タイプのバリエーション。 追加された大型ウィングと脚部バランサーにより中低速域での飛行安定性の向上を実現。また大量の武装を効率的に管理するためヘッドセンサーは一回り大型のものに換装された。 「テンペスタ」名前の由来はイタリア語で嵐、暴風雨という意味。 コルベット艦型MMS 「バッカニア」 :カタリナ社第5開発局製 :主兵装備 MKS40 2mm速射砲 大型多目的ミサイルランチャー スタンダートミサイル 単装機関銃 巡航ミサイルなど カタリナ社が開発したコルベット艦をモチーフとした武装神姫。 バトルロンドでは従来の戦艦型MMSは強力ではあったが大型で鈍重、目立ちやすかった。そのため2040年代以降ではより小型のポケット戦艦型MMSという豆戦艦まで現れたが、それでも並みの神姫の数倍の巨体であった。そこで登場した本級で装甲や火力は戦艦型MMSに比べ劣るが、機動性や速力、隠密性を高めた汎用小型艦MMSが登場した。ステルス性を配慮した特徴的な設計が行われており、また、全長200mm級の小型の艦型ではあるが、レーダー波を反射しにくいよう、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が採用されているなどの特徴がある。高性能レーダー・ソナー、センサーなどの電子機器と、長射程・高発射速度の2mm単装速射砲の組み合わせは優れた戦闘能力を発揮でき、戦艦型MMSよりも小型・高速・軽武装で、戦闘のほか哨戒、強行偵察、護衛などに使用され、対地・対潜・対空作戦能力を有し、戦列を組むような大きなバトルロンドでは、戦艦型MMSの補助を主に行った。小型で軽量な点を生かしてさまざまな運用法で活躍し、この種の小型艦型MMSの有用性を示した。コストパフォーマンスに非常に優れているので相当な数が量産されて広く使われている。 問題点として、バランスは良く安定したスペックを持っており、使いやすさを突き詰めたモデルではあったが、戦いにおける合理性を求めすぎて、派手さや美しさとは無縁の非常に地味な実用神姫になってしまった。 名前の由来の「バッカニア」とは大航海時代に国の許可を得て敵国の略奪を行った私掠海賊のことを指す。 小型だがコストパフォーマンスに優れていた。 砲塔が速射砲型とミサイル型の2種が存在する。 輸送艦型MMS 「リバティ」 :カタリナ社第5開発局製 :主兵装備 対空連装機関砲×2門 カタリナ社が建造した輸送艦をモチーフとした支援用MMS。 元々は普通の商船貨客フェリーを改修した艦船タイプの大型神姫。2段式の甲板を持ち、下部に乾ドックを持ち、MMSや車両、または潜水艇を搭載し輸送することが可能。また支援物資や燃料、武装なども搭載可能。前後にランプが設置され搭載力は非常に高い。 完全に支援に徹した運用を目的をした神姫で地味でぱっとしないが、集団バトルロンドでは1隻いると非常に便利な神姫であった。高い搭載能力を生かし様々な運用で可能で、使い方しだいではなんでも出来た。 甲板に航空MMSを搭載し、軽空母として使われたり、大口径砲を搭載させて仮装巡洋艦のような使い方をしたり、砲台型、戦車型MMSを乗せて浮砲台になったり、大量の機雷や爆雷を乗せて機雷施設艦の役割を行なったり、ときには潜水母艦になったり汎用性は非常に高かった。 とりあえず、一隻いれば何かと便利に使えためバトルロンドでは重宝されたが、攻撃力は貧弱、機動力は無きに等しく鈍重で、貨物船など既存の商船を改造したため、装甲等の防御力は申し訳程度しかなく、爆撃や砲撃で簡単に沈められた。
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剣と剣がぶつかり合う音が、廃墟に響き渡る。 片刃の長剣、エアロヴァジュラでと長槍の破邪顕正をはじきあげ、HMT型イーダ・ストラダーレ――個体名ヒルデガルドは距離をとった。 対する侍型紅緒――個体名藤代は地面を蹴り、こちらに一気に距離を詰め、長槍を突き出してくる。体勢を立て直す暇を与えないつもりのようだ。 『エアロチャクラムで受け流せ』 「はいですわ!」 マスターからの指示を受け、ヒルデガルドは左側のエアロチャクラムを瞬時に操作する。 パンチを打つように突き出したエアロチャクラムの表面装甲を破邪顕正が薄く削りながら流れていった。 ――西暦2036年。 第三次世界大戦もなく、宇宙人の襲来もなかった、現在からつながる当たり前の未来。 その世界ではロボットが日常的に存在し、様々な場面で活躍していた。 「そこっ!」 藤代の体勢が流れたところで、エアロヴァジュラを一閃。しかし、右肩の鎧部分を斬り飛ばすだけに終わる。――藤代がとっさに槍の石突をつかってこちらをヒルデガルドを殴りつけたからだ。 「うっ!」 「危ない危ない。だが、勝負はこれからだ!」 藤代は再び距離を詰めてくる。武装は破邪顕正から為虎添翼と怨鉄骨髄へと変わっていた。手数を重視し、こちらを押しこむ腹のようだ。 「そらそらそら!」 「くううっ!」 ヒルデガルドはエアロヴァジュラを一度放棄。エアロチャクラムを両手で操り藤代の連撃を捌いていくが、鋭い刃を持つ二振りの小太刀は容赦なく装甲を削り取っていく。 ――神姫、そしてそれは、全高15cmのフィギュアロボである。“心と感情”を持ち、最も人々の近くにいる存在。 多様な道具・機構を換装し、オーナーを補佐するパートナー。 その神姫に人々は思い思いの武器・装甲を装備させ、戦わせた。名誉のために、強さの証明のために、あるいはただ勝利のために。 「どうしたどうした! 懐に入り込まれては手も足も出ないか!?」 「……っ、うるさいですわ! えいっ!」 轟、という音を従えてヒルデガルドはエアロチャクラムを振りぬく。しかし、藤代は半身になってそれを受け流すと、為虎添翼を下から振りぬいた。 懐深くに入りこまれたせいか、ヒルデガルドは咄嗟に体をそらしたが、為虎添翼の剣先がヒルデガルドの頭部に装着されていたルナピエナガレットを叩き割る。 「あっ……」 そのまま体勢を崩し、倒れるヒルデガルド。藤代は勝利を確信した。 「これで終わりだっ――首級、頂戴!」 仰向けに倒れたヒルデガルドに、藤代は逆手に握った怨鉄骨髄を振り下ろした。 オーナーに従い、武装し戦いに赴く彼女らを、人は『武装神姫』と呼ぶ――。 第一部 ヴァイザード・リリィ 渾身の力で振り下ろされた怨鉄骨髄は横方向の衝撃に弾かれ、廃墟の壁に突き立った。 ヒルデガルドがエアロチャクラムを倒れた状態から振りまわし、怨鉄骨髄を叩いたのだ。そのままその勢いを利用してヒルデガルドは体勢を整える。 「っ……。必殺のタイミングと思ったのだがな」 悔しそうに、しかし嬉しそうに笑う藤代。 「まあいい。まだまだ楽しめるのは私にとって嬉しいことだ……。久々の強敵だ。こう早く終わっては困る」 「……くふふっ」 ヒルデガルドも笑う。 「なるほど、貴女も楽しいか。そうだろう! 我らは武装神姫。戦うために生まれた存在だ!」 「……くふふっ。もちろん楽しいですわ」 ゆっくりとヒルデガルドは立ち上がる。そして、まだ顔に引っかかっていたルナピエナガレットを素手で掴み―― 「ですが、ワタクシは戦うことが好きなのではありませんの――」 ――握砕した。粉々になったバイザーは0と1に分解され、データの海に消えていく。 露わになった紫水晶色の目が恍惚の表情に眇められる。 「――勝つことが好き。勝つことが楽しいのですわ」 「……愚かな。結果のみ求める者に碌な者はおらんぞ?」 「かまいませんわ。――もっとも、『彼女』は戦うこと自体あまり得意ではありませんが、ワタクシは違いますわ。全力でお相手いたしますわ、お武家様」 瞬間、地を蹴る。二体の神姫の距離があっという間に零になる。 「!!」 あまりのスピードに藤代は対処が遅れた。 ハイマニューバトライク型であるイーダ型は機動力には確かに定評があるが、ここまでの瞬発力は藤代にとっては前代未聞だった。 藤代はとっさに為虎添翼を眼前に立てる。 刃がかみ合う硬質音。エアロヴァジュラと為虎添翼がぶつかり合った音だ。 「……ここまでの瞬発力を出せるとは。ようやく本気になったということか?」 「本気? ……そうですわね。勝つためにワタクシはおりますの。ゆえにワタクシは常に本気ですわ」 ――エアロチャクラムがノーモーションで振られる。身を引くことが敵わず、藤代は宙を舞った。 「がっ!?」 バーチャルの空を高く舞い上がり、背中から地面に叩きつけられる。 「ぐ……くそっ」 起き上がろうとする藤代。しかしそれは直後に上から飛びかかってきたヒルデガルドに押さえられた。 「ぐっ!」 エアロチャクラムで両手首を掴まれ、地面に押さえつけられる。ヒルデガルドはエアロヴァジュラを逆手に握り、藤代の喉に突きつけていた。 「……どうした? 獲物の前で舌なめずりとは。さっさと首を切るといい」 「……くふ、くふふっ。負けが決まっても、強気な御方……。ますます気に入りましたわ」 ヒルデガルドはそう言うとエアロヴァジュラを藤代の首筋のすぐ横に突きたてたそして―― 「!?」 「いつまでそんな強気でいられるか――試させていただきますわ?」 「――っ! むぐっ!?」 ――藤代の唇を、自身のそれで塞いだ。 たっぷり十秒近く口づけを交わした後、ヒルデガルドは顔を離す。 藤代はあまりの出来事に声が出ない。 「な!? な、何――」 「貴女はワタクシの獲物――。ならば、ワタクシがどう料理しようと、ワタクシの勝手でしょう? 御安心なさいな、美味しく食べて差し上げますわ」 ヒルデガルドの右袖飾りが展開し、中の機構をむき出しにする。その起動を確認した後、ヒルデガルドは右手で藤代の身体をまさぐりはじめた。 「きっ貴様っ! 自分が何をっやっているのかっ……くぅっ、わかっているのか!?」 「勿論ですわ。さあ、早く貴女の声をお聞かせくださいな――」 「や、やめ――ひぅっ!? ふぁっ! やぁっ!?」 突如として始まった羞恥劇に、藤代はエアロチャクラムを振りほどこうともがくが、ヒルデガルドが藤代に触れるたび、藤代から力が抜けていく。 外では彼女たちのマスターが何か騒いでいたが、ヒルデガルドにとってはそれは些末事以下であった。 「くふ、くふふっ。くふふふふっ……」 「い、嫌だっ! 嫌だ! やめろ、やめろっ! やめっ、おねがい、やめてぇっ……」 藤代の願いむなしく、ヒルデガルドの指は彼女の身体の隅々までを舐めつくし、凌辱する。 そして、それが秘部に到達しようとしたときだった。 ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ! ――Surrender A side. Winner Hildegard. 藤代側のサレンダー。ジャッジの審判が下ると同時に、藤代の身体は0と1へと変換され、バーチャルの空へと還っていく。 それを見送り、ヒルデガルドは先ほどまで藤代を嬲っていた右手を舐めて、呟いた。 「もう、あと少しの所でしたのに――無粋な殿方ですこと」 ◆◇◆ ――「また」やった……。 俺――如月幸人は筐体の前で頭を抱えた。 周囲で観戦していた他の神姫やそのマスター達はこちらをみて苦笑ともとれないような微妙な表情をしている。 その顔は全て「相手も可哀そうに――運が悪かったなあ」と語っていた。 筐体の向こう側では、紅緒型の神姫――確か藤代、といったか――のマスターが泣き崩れる彼女を必死に慰めていた。 「主っ……主ぃっ……。私、汚れてしまいました……。この身を全て主に捧げ、永久の忠誠を誓ったのに……」 「藤代っ!? 藤代! 大丈夫だ! あれは全てバーチャル空間での出来事だ! お前の身体には一片の汚れもない! あとその言い方は俺に激しい誤解が生まれるからやめてね!」 「あのイーダ型に触れられた感触が、今でも……。こんな汚れた身体では、もう主にお仕えすること叶いません。主、貴方を残して先に逝く私をお許しください――」 「藤代――ッ!?」 ……なんだかすごいことになってる。 こちらが指示したことではないと言え――ひっじょーに申し訳なくなってくるが、やっぱり謝るべきだよなあ……。 ――こちら側のインサートポッドが開き、中から相棒――ハイマニューバトライク、イーダ・ストラダーレ型「ヒルデガルド」が姿を見せる。 バーチャル空間で壊されたルナピエナガレットは何事もなかったかのように彼女の顔面を覆っていた。 俺とヒルダとの目が合う――正確にはバイザー越しにだが――。ヒルダは筐体の向こう側の惨状を見やり、俺を見やり、もう一度向こう側の惨状を見て、呟いた。 「……マスター。私、また――」 「――そう。『また』、やった」 それを聞くや否や、ヒルダは脱兎のごとく駈け出した。 全長五メートルほどの筐体の上を全力疾走して向こう側にたどり着くと、その勢いそのまま―― 「――申し訳ありませんでしたわっ!」 ――スライディング土下座をした。 一瞬の事に、藤代も、彼女もマスターもぽかんとしている。 「私、貴女にとんでもないことを……。本っ当に申し訳ありませんでしたわ!」 「え、あの、いや……」 藤代はマスターの後ろに隠れておびえている。一方のマスターはバーチャル空間でのヒルダと、今目の前で土下座をしているイーダ・ストラダーレのギャップに追いつけず、目を白黒させていた。 そしてその流れでこちらを見られても、俺も困るのだが。 「あー、えっと、どうもうちのヒルダがご迷惑をおかけしました……」 俺も頭を下げる。神姫の不出来はマスターのそれだ。 それに言っちゃああれだが――ヒルダの巻き起こす騒動に頭を下げるのも、ここ一カ月で慣れた。悲しいことだが。 「あの、いや、その……どういうこと?」 藤代のマスターは周囲のギャラリーに説明を求めた。観客たちは苦笑して互いに顔を見合わせるだけである。 「まあ、挑んだ相手が悪かったよな」 「正直、こうなる予感はしてたもんね」 「ヴァイザードの仮面をはがすなってのは、なんつーか、もうここの常識だよな」 口々に言い合うギャラリーの言葉を聞き、藤代のマスターの頭にさらに疑問符が浮かぶ。 極めつけは、ヒルダの放った一言だった。 「……責任を取れ、とおっしゃるのであれば、従いますわ。藤代様。私のこと、どうかお好きなように――」 「ひっ――!」 それを聞いた瞬間、藤代はガタガタと震えだした。 先ほどの恐怖がよみがえったのか、それとも先ほどとはまったく違うヒルダの性格のギャップに恐怖を覚えたのか。 藤代はマスターの手から飛び降り、ゲーセンの入口へと逃げだした。 「うわああああああああん!」 「ま、待て! 待つんだ! 藤代――!」 当然、それを追いかけて彼女のマスターもいなくなる。 残ったのは三つ指ついて土下座していたヒルダと、天井を仰いでため息をつく俺。そして、それを見守るギャラリー達だけだった。 「……ヒルダ、戻ってこい」 「……はいですわ」 しょんぼりと肩を落としてすごすごとヒルダは戻ってくる。足元にたどり着いた彼女を拾い上げ、胸ポケットに仕舞うと俺は荷物を手に取った。 「……どうして、私はこうなんでしょうか」 「……俺に聞かれてもなあ……」 「今の私、普通ですわよね? なのに、外れてしまうとどうしてああなってしまうんでしょう」 「…………俺に聞かれてもなあ…………」 そんなすでに二十以上は繰り返した問答を今日も繰り返しながら、近くのファストフード店で待っているであろう連れと合流すべく、俺たちもゲーセンを後にする。 ――俺の神姫は、バイザーを外すと性格が豹変する、世にも珍しい二重人格の神姫だった。 ◆◇◆ 次へ トップへ
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登場人物 神姫サイド 名前:ジュリ(ジュリエット) タイプ:侍型 種別:ガラ悪い 備考: 慎之介に拾われた神姫1号。真っ赤なタテガミの様な髪が特徴。 マスターである慎之介とタメを貼るほど口が悪い。 態度もそれなりにでかいが、感受性が強く意外に繊細。 一切の武器管制能力がないため、バトルには出られない。 数年前はファーストランクにいた。 名前:ノゾミ/カナエ/タマエ タイプ:猫型 種別:にゃーにゃーにゃー 備考: 慎之介に拾われた神姫2号/3号/4号。 悪質な改造により言語中枢に障害があるため「にゃー」としか言えない。 よって、コミュニケーションは筆談中心(当人達は会話できる)。 頭の回転がよく、機転も利くがその分肉体面はトロい。 しかもあくまで3人セットでないと全力が出せないので、バトルは苦手。 不良の原因調査のため、とある研究所に行って以来食事をとるようになる。 名前:パトリシア タイプ:天使型 種別:マイペース 備考: 慎之介に拾われた神姫5号。 初期不良により、飛行中の空間認識能力が欠如しているため、上下左右の区別がつかず、まともに飛ぶことができない。 地上においても恐ろしく方向音痴。 当人はあまり気にしている節はない。 上記理由により、接敵前に時間切れになることが多く、バトルは苦手。 名前:アイリーン タイプ:砲台型 種別:チャキチャキ 備考: 慎之介に拾われた神姫6号。 元は違法の闇バトルにおいて、通常の規格外の腕力設定を為されたが、余りに度外視された設定だった(人を殴って殺せるレベル)ため廃棄処分されかけた所を逃げ出して慎之介に拾われた。 ---とは本人の談。どこまで事実かは不明。 事の真偽はともかく、実際規格外の腕力のため公式バトルには出られない。
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皆様、始めましテ。自分ハ第6弾建機型MMSグラップラップの試作機、ビルトと申しマス。只今自分ハ神姫センターの一角ニ有ル、とあル店舗ニ居リマス。 「さーさー、キモオタ共も婦女子諸君もよってらっしゃいですにゃ! うちは安さと品揃えじゃ他のツイヅイを許さないですのにゃ! ホラっ! 其処のこぎたにゃいアンタ、自分の神姫に甲斐性見せたって損は無いのですにゃよ?」 「小汚くって悪かったな、仕事帰りだよ。・・・あ、そういやシビルが何故かツナギなんて着たがってた覚えはあるけど、流石に・・・」 「あるですにゃ。ピンクのツナギだって完備完備!!」 自分ハ、武装神姫デ在りマス。つまりハ戦い合う為ニ開発されたタ機械でありマス。 「へえ、久しぶりに来て見たらこんなお店もあったのね。あ、これつくもに似合いそうな色のケープ。このストールとかロングスカートとか帽子も・・・」 「隊長ぉっ!! そんなものでお金使い切る前に、僕を早くメンテに連れて行って下さいよぉ!!」 「・・・何だか甘い匂いのする客だにゃ。店内への飲食物の持ち込みは止めて欲しいにゃ。試着の時ベタるから」 そしテ自分ハ建機型でありマス。建機と言えバ藤岡・・・でハ無ク、総じて無骨ナ外見ヲ有しマス。何故ならバその用途に見タ目は重要視されまセン。自分モそれニ習イ、見タ目ニ囚われズ何時か巡り合ウ自分ノ主の為ニ粉骨砕身すル所存デス。 「ったくネギの奴―、『俺は金出さないぞ。欲しかったら盗ってでも来い。俺はゴスロリ以外買う気は無い。そもそもゴスロリこそ、少女の魅力を最大に引き出すファッションでありetcetc・・・・』とか脳沸いた事言いやがってー! そんなに言うなら望みどおりにやってやるー! やっぱいいよなフライトジャケットはー」 「にゃに!? にゃーの目前で万引きするとはごっつええ度胸ですにゃ!! 行け下僕ぷちどもっ!! 泥棒カラスを北京ダックにするにゃ!!」 「後このスカジャンも・・・ あ? 何だこのぷち共はー。オレっちの邪魔を・・・」 「必殺にゃイツオブラウンドぉ~!!!」 射撃斬撃砲撃突撃爆撃襲撃狙撃打撃投撃鞭撃過激惨劇、盥。 「ぎゃー! まわってまわってまわってオチ~る~〈泣〉」 「・・・なのニどうしテ自分ハ服飾店ノ店員なドやって居ルのでしょウカ!?」 「新入り! つべこべ言ってにゃいで働くにゃ!! 手が多いからって使わなきゃムダムダにゃ!」 窓ヲ見れバ、人工光デ埋メ尽クされてイタ閉店時間。慣れヌ作業デ疲レ果てた自分ノ横デ、先輩はデコマ様よリ何かヲ受け取ル。在れハ、プリペイドカード? 「はいにゃーの助、バイト代だよ。新人教育の分、それとアレの分も含めて今日は多めにしておいたよ」 「さすがデコ魔ちゃん、あのヘタレと違って気前がいいですにゃ♪ これであのヘタレを素敵な刺激の旅へと誘えますにゃ♪ ぐふふふふ~♪」 「あはは、ほどほどにね。それじゃあ、お疲れ様。兄さんによろしく」 「お疲れにゃ! また猫の手が借りたくにゃったらいつでも呼ぶにゃ~♪」 言ウよリ早ク、先輩はカードを振リ回シながラ走り去って行っタ。もう見えナイ。しかシ神姫ニ・・・ 「さて、次は貴女の分を・・・」 「・・・神姫ニ、アルバイト代ヲ渡すノですカ?」 「え、変? だって正当な報酬じゃない?」 こノ人、こノ神姫用服飾店店長デ在リ、自分ヲ此処ヘ無断デ連れて来タ張本人で在ル彼女、通称デコマ様ハ、本当ニ不思議そうナ顔デ自分ヲ見つめ返ス。そんナ事、変ニ決まっテ居マス。 「労働基準法ニそんな項目ハ有りまセン。ソモソモ自分達ハ戦う為に造られタ武装神姫デス。其れガ人間の様ニ働くナド、可笑シイでショウ」 「えーでも、子供にお手伝い頼んだってお駄賃あげるのは普通じゃない? 別に正統さに法律関係ないよ。あ、でもお年玉とかたまに法で規制して欲しくなるな~。自分であげる様になってから切に思うよホント。それから役目が違うっていうのだってさ、副業で農家やるラーメン屋とか画材をアルバイトで買う画家とか・・あ、それは違う?じゃあ公務員・・はバイトしちゃいけないんだっけ。でも今じゃ公務員の給料下がりっぱなしだしバイトしないと食べてけないよねー。あ、そういえば昨日役所に行ったら丁度モトオさんがいてね、あ、モトオさんて私の恋人なんだけどコレがまた格好良くてね。でもそのとき手元を見たら貰っていたのが何とぜ・・・」 「兎モ角!! 自分ヲ開発部ニ返しテ下さイ!! ソモソモ何故ニ自分なのデスカ? 客引キでしタラ先輩ノ様ナ可愛らしいタイプを選定スレバ・・・イヤ其レ以前ニ・・・」 「でも建機型の貴女って腕いっぱいあるじゃない? だからいっぺんに服何個も持てて適材だと思ったの。それで貴女の開発会社に勤めてる友達の所に行ったの。そうしたら別会社だけど同じ第6弾試作2人は両方失踪した~って話してるじゃない? だから貴女もう一人くらい減っても大丈夫かなって思って。あ、でも皆会議やってたし、私も店の開店時間近かったから勝手に連れてきちゃったけど、ちゃんと断りの手紙は置いて来たよ。それにお給料は払うけど? そう言えば建機といえば土方子って娘がここのセンターによく来るの。今日はマスターだけ来てたけど。で、その土方子ちゃんも面白いんだよ。まああのカラーリングは重機と言うより猛獣注意・・・」 ソレニソレカラ彼是云々カンヌン・・・ト、デコマ様ハ矢継早ニ取り止めモ無ク話シ続ケル。この方ハ一度話し出したラ止まら無イらしイ。イヤそんナ事よりモ・・・ 「待って下サイ!! ソモソモ、どうしテ神姫ヲ雇用スル必要ガ在ルのデスカ!? 普通ハ人間ヲ雇用スルでしょウ!!」 「だってここ、神姫が自分の服買いに来る所だもの」 「・・・ハ? そんナ馬鹿ナ・・・アっ!!」 ソウ言えバ気ニなっテいまシタ。店内ノ通路ハ狭ク、小物陳列用什器ヲ改造したハンガー掛けハ店内ニ過密過ぎル程ニ配置さレ、奥まっタ場所ノ商品ハ完全ニ人間ノ目線からでハ死角ニなりマス。シカシ、ワザワザ神姫ガ手ニ取っテ見れル様、ソノ全てニ階段ガ用意されていマス。そしテ商品はパッケージングされずタグのミ、これハ明らかニ“玩具”でハ無ク“服飾”ノ陳列方法デス。更ニ、店内にハ神姫用試着コーナーすら有ル。 「・・・確かニ、神姫サイズに合わせタ服飾品点ト考えれバ、全テ合点ガ行きまス・・・」 「ついでにお値段も良心的でしょ? 神姫の貰えるお小遣いなんて大して高くないしね。布代は当然少ないし、“神姫用らしいある方法”でうちは製造コスト安いからこの値段で出せるの」 「しかシ、これハ・・・」 神姫ハ人間ニ従うモノ。神姫ハ人間ニ奉仕すル為ニ生まれタ機械。其レが義務。其レが目的。それなのニ・・・ 「神姫ガ自分ノ為ニ服を買うなんテ、全ク無意味デス!!」 「そお? でも奉仕するとか別にいいじゃないそんな事。私も好きでやってるんだよお店。色々な服作るのも見るのも好きだし、私の選んだ服で着飾った娘が喜ぶの見るの好きだし、色んな娘がワイワイ服選んでるの見てるだけだって楽しいし。大体オンナノコにとって服選びは一番楽しい事じゃない。その辺に体の大きい小さいは関係ないでしょ。だったら普段ココで気持ちよーくお買い物してたらバトルの時だって調子いいんじゃない? それにオーナーが自分の甲斐性見せるためのプレゼント用にって買いに来る場合もあるし、人間様にもそこそこ人気よ。あーそう言えば今度友達が作った神姫用の靴も販売するんだよココ。そしたらまた新しいお客さんも来るし、大体靴も合わせないと服って選びづらいし。あ、そうだ水着もあったら・・って、元々水着みたいなかっこうしてるか。じゃあ・・・」 「しかシっ!! 自分達ハ戦う為だけニ・・・造らレたモノなのデス」 「でも・・・だったらオンナノコの形に造らないでしょ。だからいいの♪ 小さかろうと大きかろうと、オンナノコが着飾りたいのは世の摂理よ!! それを邪魔なんて総理大臣だって出来ないでしょ♪」 「ハ・・ハイ・・・」 つまリ、女性であるなラ、着飾るのハ必然ニ近ク、それハ神姫であろうト変わら無イ。其れガこの方ノ考えらしイ。しかシ・・・ 「自分ハ、建機デス。見てくれなド、気にモ、されナイ・・・」 「じゃあ塗ろっか?」 「・・・ハイ?」 「実はずっと気になってたんだよね、そのアームの色。ちょっとジジくさいよねー。どうせならライムグリーンでどわ~って塗っちゃわない? バイオレットに白ストライプとかもちょっといいかも。あーラメもいいかもラメ。あとアクセ色々つけるとか? このアームに神姫用ブレス入るかなぁ? アンクレットの方が・・・あーそれは大きすぎかな。とりあえずリボンつけましょリボン。在庫はえっと・・・」 「イヤイヤイヤイヤ! 普通建機ニ其ノ様なビビットな配色ハ行わナイでショウ!!」 「そう? 似合うと思うけれど?」 「そうカモ知れマせんガ、しかシ・・・」 物にハそれなリノ根拠ガ有ルからこソ、配色ガ決めラレ、其れニ色を塗リ替えたとテ、其ノ本質マデ変えらレル訳でハ無いのデス。 「もー、カタいなあビルトは。いいじゃない見た目くらい好きでも」 そうハ言えド、例エ色如キを変えようトモ、自分ガ“機械”で在リ“建機”で在ル事にハ変わり無イのデス。其レでハ、只、虚しクなるだケ・・・ 「そもそも貴女って、建機“型”じゃない」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ア。」 「そう、つまり自分の好きな色でいいんじゃない?」 「・・・そンナ気ガして来まシタ」 「じゃあともかくリボンつけましょ。この深緑のとかどう?」 結、結、結、結、緑。 「・・・イイっ!!」 「イヤイヤ黄色に緑は悪趣味ですにゃ」 「ギャァっ!? 先輩!?」 「忘れ物取りに来たらナニ洗脳されてるにゃ新人。デコ魔ちゃんは別にあんたの事考えてるワケじゃにゃくて、単にヒトサマのモノだろーが神姫だろーがヒト自体だろーが気に入らにゃかったら徹底的に自分色に塗り替えちゃうだけな変人ですにゃ。ホラそこのヘンな色の壁とか道端にあった重機とか」 「えーでもこの前のロードローラーをレモンイエローに塗ったのは好評だったよ? ピンクも結構いいのよねピンク。ダンプ塗った時、赤系アクセントに入れたらカッコ良かったんだよねー、血が付いてるぽいって言われたけど。あーでも何でパールホワイトのバックホーは不評だったんだろう?・・・あ、汚れ目立つからだ。だったらシルバーを地にして、赤系でスリットを塗ったり~。でもこの前間違えて排気口ふさいじゃった事あったんだよね。あの時は結局機械が火を噴いて怒られた怒られた。だから・・・」 「塗ったンでスカ!? 重機を!?」 「え?うん。後放置自転車とかここのオーナーの車とか電車とかそれから・・・」 「イヤイヤイヤイヤ!! 器物損壊罪デスよ!!」 「それから・・・あれもこれもそれも・・・それで・・・」 「・・・聞いてテ居りマせんネ」 「新人、逃げるにゃら今のウチにゃ」 「うゥ・・・自分ハ一体何ヲ信じれバ良いのデショウ・・・」 「そんなもんにゃ、人生にゃんて」 ちゃんちゃん(?) 目次へ